MARIA WETSUITは、海と旅、そして人とともにある。

センチメンタルな秋の風と冬の静寂な空気が交錯する、10月の終わり。ブランド立ち上げから4年ーー。世界中の海を旅しながら構想を描いてきたMARIA WETSUITによるサーフリトリートが実現した。

旅先に選んだのは、カリフォルニア。

「カリフォルニアには、私が生きるうえで大切にしているものがつまっている。ただ旅を楽しむだけではなく、“旅と暮らしのはざま”から、その空気感を感じ取ってもらいたかった」

と語る、ディレクター村上五十鈴のリトリートに込める想いに触れながら、カリフォルニアの地に集まった意志あるLady Sliderたちが過ごした9日間の美しき旅を振り返る。

vol.1では、MARIA WETSUITのリトリートならではの体験、巡ったサーフポイント、 vol.2では、街歩きなどのアクティビティやホストファミリーについて、2回にわたり届けたい。


▶︎about RETREAT

ーーリトリートの概要を教えてください。

LAXで参加メンバー、先に現地入りしていたフォトグラファーNachosと合流。カリフォルニアに住む友人Neneが運転する車で、ベンチュラ北西部にある小さな集落、ラコンチータへ。友人Yokoが夫婦で営むゲストハウス「Surfers dream house」に5日間ステイ。その後は、Neneが暮らすオーシャンサイドへ南下。Neneの家に4日間ステイし、北から南まで、ログの主要ポイントをたくさん巡りました。街歩きやトレッキング、山奥の温泉にスリフト巡りと、サーフィン以外のアクティビティも充実した最高の9日間でした!


参加メンバーは、湘南、大阪、種子島から集まったロガー4人

ーーMARIA WETSUIT初となるリトリートに、カリフォルニアを選んだ理由は?

じつは2020年に訪れたカリフォルニアでのアクシデントがきっかけなんです。カリフォルニアでNeneたちと数日間のサーフィンライフを楽しんでいたところ、エンシニータスで食べたタコスの具材にあたったのか、娘とともに突然の嘔吐に見舞われて......。すぐに病院で薬を処方してもらい体調は落ち着いたものの、体も心もズタボロ状態。数日後にメキシコのサーフタウン、サユリタで撮影する予定を控えていたのですが、飛行機もホテルもすべてキャンセルし、今回のリトリートでもステイさせてもらったラコンチータのYokoの宿でしばらく休ませてもらうことになったんです。

居心地のいい空気感、国道101越しに広がる海、頼もしい山々。嘘みたいに美しい夕日やYokoの愛情こもった手料理など、「大丈夫だよ」と受け入れてくれているようなありがたい環境のおかげで次第に体調もよくなり、すぐ近くのポイント、リンコンでサーフィンしたときのこと。

うまく言葉にできないけれど、心の奥のほうから湧き出てくるような深い安らぎとともに、「ここにみんなを連れてきたい」と、強く思ったんです。

そんな経緯から、リトリートの始まりの地にラコンチータを選びました。カリフォルニアには何度も訪れていたし、他にもシェアしたい場所がたくさんあった。また、レンタカーや宿などの手配もサポートできるという面においても、はじめてのリトリートはカリフォルニアで、というのははじめから心に決めていました。


最高にいい天気に恵まれたある日の午後。海あがりに訪れたオーハイにあるアートブックにて


ーー近年、多様なジャンルのリトリートが存在しますが、MARIA WETSUITのリトリートだからこそとくに配慮したことは?

余白、そして余白から生まれる余裕です。これらはリラックス状態にあるときに得られるもの。サーフィンも、余白と余裕があるときこそいいライディングができるように、旅もしかり。今回は、参加メンバーそれぞれが、余白と余裕を感じ、そこから得られる“なにか”を見つけてもらえたら、という想いから、予定はあまりつめ込まないように。

朝起きて、さぁ今日はどうする? 海? それともカフェでブランチ? 連日のサーフィンで疲れてるかもしれないから、近場の浜辺でお散歩もいいかもね。なんて具合に、みんなの気分に合わせて5パターンくらいのプランを準備していました。


▶︎about SURF

巡ったサーフポイントはこちら

  • サンタバーバラ/リンコン
  • ベンチュラ/Cストリート
  • ロサンゼルス/マリブ
  • カールスバッド/テラマー
  • サンクレメンテ/サンオノフレ
  • エンシニータス/スワミーズ


ーー9日間という限られた時間のなか、リンコンからスワミーズまで、多くのポイントを巡るうえで心がけていたことは?

サーフィンはタイドや風、うねりの向きなど、あらゆる要素が関わってくるので、プランニングに柔軟性を持たせること。そこにリトリートのテーマである余白と余裕を加味し、よりサーフィンにコミットできる環境づくりを意識しました。そして、巡るポイントはクラシックなサーフポイントばかりなので雰囲気を乱さないように行動することも心がけていました。

サンタバーバラ、ベンチュラ、エンシニータス......どこもポピュラーなサーフタウンだけど、人や街並み、カルチャーはそれぞれ異なります。そんな目の前に映し出されるさまざまな舞台を、ロードトリップしながら楽しんでもらいたい。そんな想いがありました。

また物価の上昇が続くなか、移動した分だけガソリン代もレンタカー代もかさむので、今回に限っては正直悩みました。ただ何度も気軽に行ける場所でもないし、せっかく行くんだったら、やっぱりいろんな波質を楽しんでもらいたい。そんな私の想いを汲んでくれた現地の仲間たちのサポートのおかげで、6ヶ所のポイントを巡ることができました。ひとつの場所に長く滞在する魅力ももちろんあるけれど、ログと旅が好きなサーファーの本質に、流動的な部分があるような気がして。



もともと2人以上で同時に海に入らないように考えていたけれど、今回はどのポイントも小ぶりの波で人も穏やかだったので、みんなで一緒に。ありがたい環境でした


​​ーー今回は最初から最後まで波に恵まれていたが、ポイント選びの判断基準をどこに置いていた?

もちろん波の良し悪しも大切ですが、それよりもみんなの気持ちを優先したかった。ラコンチータ最終日、すぐ側のリンコンは小ぶりなコンディション。車を20分ほど走らせればもっとサイズのあるポイントには行けたけど、「最後だし、せっかくならリンコンでみんなで入ろうよ」という、5日間ともに過ごしたゲストハウスのオーナーのひと声で、初日に私たちを迎えてくれたリンコンへ。

波は小さかったけれど、楽しそうなみんなの笑顔、海面からひょっこり顔を見せる愛らしいアザラシ、子どもに泳ぎ方を教えるように、静かに目の前を通り過ぎていくイルカの家族、走る板の下を横切っていくレオパードシャーク......そこには波よりも大切なものが間違いなくありました。

ーー今回、参加メンバー全員がレンタルボード希望だったが、日本とは違いカリフォルニアの板はリーシュプラグがないものがほとんど。その辺りはどう対応した?

カリフォルニアでは、ボードコントロールは当たり前に身につけておくべきマナーとされているため、リーシュプラグのない板が主流です。ですがコントロールに自信のない人には、リーシュプラグ付きの板を用意しました。またホストファミリーが、いろんなモデルの板を集めてくれたおかげで、「昨日これ調子よかったから、乗ってみる?」などと、みんなでシェアしながら、乗り味の違いを楽しんだりする姿も。

今回参加してくれた4名は、もちろんスキルに違いはあったけれど、ルールとマナー、シェア精神を理解しているメンバーだったので安心でした。 


ーー今回巡ったポイントの特徴や、実際にそこでサーフィンしたときの様子を教えてください。

【サンタバーバラ/リンコン】



カリフォルニアに到着したその足で向かった先は、リンコン。ぎりぎりサンセットサーフィンに間に合った! 渓谷に反射するサンセットを眺めながら、無事にみんなでカリフォルニアで集まれたことに安堵

シーズンに入り、コンディションが決まる日には、ショートからログまでエキスパートたちがたくさんが集まるポイント。(はじめて訪れたときサイズが頭くらいあって、奥のピークには名だたる面々が大集結していた!) レギュラーのポイントブレイクで、硬くて伸びる波。大きい波が苦手な人は、インサイドのビーチ側か、さらにサイズダウンする隣のリトルリンコンに移動するなど、自身のレベルに合わせて選ぶといいと思います。 

波が小さいときは穏やかで静か。どちらにせよここはローカリズムを大切にしている空気感が漂っていて、守られている場所という感じ。ワイルドさを感じるランドスケープも見応えあり。

〉〉〉駐車場/トイレ

【ベンチュラ/Cストリート】



みんなで波とタイドチェック! もう少し引けばいい波になるね、それまでちょっと街へ行こうか? 満場一致!

比較的ビギナーやビジターでも入りやすく、駐車場やトイレもあるので過ごしやすい。トイレ前は波が掘れてるのでショート向き、ログにはピアの右隣あたりがおすすめです。うねりの向きにもよるけれど、引っかかりやすくスローで長く乗れるやさしいログ波。街へのアクセスもいいので、海上がりはベンチュラの街でブランチでも!

〉〉〉駐車場/トイレ/シャワー


【ロサンゼルス/マリブビーチ】



リンコンからオーシャンサイドに向かう途中、マリブでサーフするのはこの2人! はじてのポイントでも楽しんでトライする姿勢が、ビーチから眺めていて伝わってきた

ダクトテープやオリジナル・スプラウト・マリブ・ロングボードチャンピオンシップなど、ログの由緒ある数々のコンテストが開催される、ロガーなら一度は入っておきたい聖地。世界を代表する有名ロガーやローカルサーファーたちでいつも混雑している人気ポイントです。

地形的にレギュラーのポイントブレイクで、基本的にみんなレベルが高いから、いい波を取るのが本当に難しい! 波待ちで人間関係を構築して、仲良くなって譲ってもらうしかないかも。(笑)3つのポイントに分かれていて、南西うねりが入ったら最高! めちゃくちゃ長く乗れるログ波に。

〉〉〉駐車場/トイレ/シャワー


【カールスバッド/テラマー】



太陽が海の向こうへと移動するにつれ、世界がブルーとピンクの淡いグラデーションに色づいていく......あのファンタスティックな情景は、みんなの心に深く刻まれたはず。この日はセットムネくらいだったかな

大豪邸が立ち並ぶ超高級住宅街の麓にあるポイントで、パワーはあるけどフェイスが広くて乗りやすく、ログ向きのタテ波。夕暮れが近づくと淡褐色の岩肌に空の色が反射し、ゆっくりと染まっていく様子は、まさにドリーミーサンセット!



【サンクレメンテ/サンオノフレ】



この空間に一歩足を踏み入れれば、開放的な雰囲気と心地よい時間が待っている! この日もユル波でロガーの桃源郷になっていた

ロガーにとって最も有名なユル波のポイント。大きく3つのブレイクに分かれていて、レギュラー、グーフィーどちらも楽しめます。とくにフォードアーズ前は、小さくてもきちんと芯のある波だから乗りやすく、ロガーにとってどのレベルでも楽しめます。波待ち中にお喋りしたり、ときには波をシェアしたり......自分にフォーカスするというよりは、みんなで楽しもうよ、というピースフルな雰囲気が漂っています。

潮の上げ下げ関係なくずっと遊べるので、好きなときに入って、お腹が空いたらビーチでサンドイッチを食べたり、誰かのライディングを眺めたり、心地いい風を感じてボーッとしたり......1日中のんびり過ごさなきゃもったいない場所。

〉〉〉駐車場(1日15ドル)/トイレ/シャワー


【エンシニータス/スワミーズ】



ラストウェーブはここ! 波のパワーをスローに感じるブレイク。海底のリーフが見えるほど海水は透き通っていて、朝なのに生ぬるい空気が印象的だった。すぐ近くをのんびり泳ぐ4頭のイルカみたいに、みんなリラックスして自分らしく波とただただ戯れていた photo by isu

空に届きそうなほど高く伸びる椰子の木、その向こうにはパワーがありながらも、静かに割れていく波。最終日に選んだスワミーズは、横に走り抜ける波とは違って、カットバックが最高に気持ちいいタテ波。水量が多くパワーもあるので、小ぶりの波でも乗ってしまえばファンウェーブ!

サイズにもよるけれど、そこまで大きくなければ比較的安心だし、ピースフルな人も多いからスキル問わず楽しめる。駐車場から海まで長い階段を降りなきゃいけないので、帰りが地獄だけど!(笑)

〉〉〉駐車場/トイレ/シャワー


ーー今回のリトリートの目的でもある「“旅と暮らしのはざま”から感じるカリフォルニアの空気感」を見事に切り取ったフォトグラファーNachosによる写真たち。なぜ彼女にオファーを?

好きな事に全力投球で挑み、夢を叶えるためなら多少の苦労も厭わない。そんなNachosの力強さにいつも勇気をもらっているし、それはきっとみんなにも伝わるかなと思って、彼女にオファーしました。




Nachosが撮る写真は、抜けのある画角、そこに流れる空気感が好き。今回は、MARIAの世界観をちょっとキャッチーに映し出してくれました。女子たちの青春アドベンチャー感みたいな(笑)

波質、美しい光、そこにいる仲間たち。
移ろう瞬間すべてが夢のようだった。

今回訪れたどのポイントもきれいな波がブレイクしていました。流れや地形に合わせてゲットしやすく、ローカルサーファーのライディングをリラックスした状態で観察できる絶好のロケーション! ラインナップにはサーフセンスが高く刺激的なサーファーばかり。たくさん吸収した彼らの美的感覚を今、自身のサーフィンに少しずつですが落とし込めている手応えを感じています。きっと参加メンバー全員が同じ感覚でしょう。ちなみに帰国後、同じ湘南から参加した友人と一緒に海に入っていますが、今までよりゆとりを持ってどんな波とも戯れていて、「こんなに変わるんだ!?」と、驚いています。

これからも周りにいる大切な仲間たちとともに波を求め、旅に出たい。カリフォルニアリトリートから帰国して約1ヶ月。すでに次のリトリートの構想を練り始めているところです。



▶︎vol.2では、街歩きなどのアクティビティやホストファミリーのことなど、サーフィン以外について掘り下げる。

 

photo:Nachos edit&text:Nana Omori

 

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